今回紹介する事例
2020年に「日本初の糖質ゼロビール」として登場したキリン一番搾り 糖質ゼロ(通称「青の一番搾り」)。2025年9月には、製法とホップの配合を見直すリニューアルを行いました。
「糖質ゼロ」という機能を打ち出しながら、あくまで“一番搾りのおいしさ”を主役にしている点が、この商品のブランドづくりの面白いところです。今回は、公式サイトの情報をもとにWHO・WHAT・HOWの視点で整理します。
商品・施策の概要
- 商品:キリン一番搾り 糖質ゼロ(350ml・500ml、アルコール分5%)
- 発売:2020年
- リニューアル:2025年9月(ダブルデコクション製法の採用、ホップ配合の変更)
- 主なコピー:「おいしさは一番搾り。糖質だけがゼロ。」「気がねなく楽しむビールが 一番おいしい。」
- TVCM:「歩数計篇」「父の着回し篇」「父の葛藤篇」
- キャンペーン:「BEAMS DESIGN 監修 青のアパレルコレクションが当たる!キャンペーン」
- 出典:キリン公式 商品ページ
- ビールのカテゴリーで「糖質ゼロ」を実現した国内初の缶商品(キリン調べ)
- 100mlあたり糖質0g・29kcal
- 一番搾り麦汁だけを使う「一番搾り製法」+独自の「糖質カット製法」
- 開発に5年以上、350回以上の試験醸造。2025年のリニューアルでもさらに110回の試験醸造
WHO
この商品は誰に向けたものか?
公式サイトでは、開発の動機として「ビール好きな人が、もっと気兼ねなく飲めるおいしいビールをつくりたい」という言葉が紹介されています。年齢や性別のターゲットは明記されていませんが、ここから読み取れるのは次のような人物像です。
- ビールが好きで、できれば毎日でも飲みたい人
- 健康診断の結果や体型が気になり始め、糖質を意識している人
- 糖質オフの発泡酒や新ジャンルでは「物足りない」と感じている人
また、TVCMのタイトルが「父の着回し篇」「父の葛藤篇」となっていることから、家族を持つ父親世代の日常を描いていると考えられます(※タイトルからの読み取りです)。
ターゲットが抱える課題・インサイト
- ビールは好きだけど、糖質やカロリーが気になって気がねなく飲めない
- 健康のために我慢するのは嫌。でも味は妥協したくない
What to Say
届けたいメッセージは何か?
中心にあるのは「おいしさは一番搾り。糖質だけがゼロ。」というメッセージです。「糖質ゼロなのに意外とおいしい」ではなく、「一番搾りのおいしさから、糖質だけを取り除いた」という順番で伝えているのがポイントです。
さらに「気がねなく楽しむビールが 一番おいしい。」というコピーで、糖質ゼロを“我慢のための機能”ではなく、“ビールをもっと楽しむための理由”に言い換えています。
Reason to Believe
そのメッセージが信じられる根拠は?
- 一番搾りブランドの信頼:長年続くビールブランドの名前と「一番搾り製法」をそのまま使っている
- 「日本初」という事実:ビールのカテゴリーで糖質ゼロを実現した国内初の缶商品
- 開発の積み重ね:5年以上・350回以上の試験醸造、2025年はさらに110回の試験醸造
- リニューアルの中身:本来は糖質カットに不利な「ダブルデコクション製法」をあえて採用し、ビールらしい飲みごたえを高めた
想定される競合
- 糖質オフ・ゼロの発泡酒や新ジャンル:価格は手ごろだが、「ビールではない」ことに物足りなさを感じる人もいる
- 通常のビール:味の満足度は高いが、糖質やカロリーが気になる
一番搾り 糖質ゼロは、この2つの間にある「ビールの満足感」と「糖質ゼロ」の両方がほしいというすき間を狙っていると考えられます。
HOW to say / to deliver
メッセージはどのように表現し・届けているか?
①【ネーミング】「一番搾り」を冠したブランド拡張
新しいブランド名をつけず、「一番搾り」の名前をそのまま使うことで、味への信頼を最初から借りています。
②【パッケージ】“青”で見分けやすく
青い缶で通常の一番搾りと区別し、「青の一番搾り」という呼び名が生まれやすくなっています。2026年10月時点で実施中のキャンペーンも「青のアパレルコレクション」と、色を軸にしています。
③【開発ストーリー】数字で語る
商品ページで、開発担当者の言葉や「350回」「110回」といった試験醸造の回数を紹介し、“こだわり”を具体的な数字で伝えています。
④【TVCM】日常のシーンで描く
「歩数計篇」「父の着回し篇」「父の葛藤篇」など、健康や家族の日常を思わせるタイトルのCMで、身近な場面とビールを結びつけています。
※お酒の情報のため、公式サイトでは年齢確認が表示される場合があります
学びポイント
マーケター視点での学び
- 機能は「主役」ではなく「理由」にする
糖質ゼロを前面に出しすぎず、「気がねなく楽しめる」という生活者のうれしさに言い換えている。 - 強い親ブランドの信頼を借りる
新しい機能の商品ほど、味やブランドへの不安が出やすい。既存ブランドの名前と製法を使うことで、その不安を最初から小さくしている。 - こだわりは数字で伝える
「試験醸造350回」のような具体的な数字は、「おいしくなった」という主張より伝わりやすい。 - 色をブランド資産にする
青い缶という分かりやすい特徴を、キャンペーンまで一貫して使っている。
まとめ
キリン一番搾り 糖質ゼロは、「糖質ゼロ」という機能を「一番搾りのおいしさを、もっと気がねなく」という価値に変えて届けている事例です。機能的な特徴を持つ商品を、どう“うれしさ”として伝えるかを考えるときの参考になります。
参考:キリン公式「一番搾り 糖質0」商品ページ(2026年10月20日確認)。ターゲット・競合の部分は、公式情報をもとにした筆者の分析です。


