今回紹介する事例
「ランチタイムが短い」「食事に割ける時間がない」――そんな忙しい現代人の食生活の悩みに寄り添う商品として登場した湖池屋の「ランチパイ」。
湖池屋が展開する「ランチパイ」は、 24年03月に発売された「忙しい現代人のスキマ時間をターゲットにした新しい軽食商品」です。
単なる軽食ではなく、「忙しい日常の中でも満足感のある食事を提供するというコンセプト」は、 多くの働く世代に響く内容と言えます。
では、ランチパイでは24年03月の発売以降「新木優子」さんを起用した広告施策を展開しています。
この施策では何を狙ったのかを分解し、マーケティングの視点から学べるポイントを見ていきます。
キャンペーン概要
- 商品:ランチパイ(ビーフカレー、キッシュ、他フレーバー)
- 開始期間:2024年11月
- 施策名:スキマランチキャンペーン
- 公開媒体:テレビCM、Web動画、SNS(Twitter、YouTube)
- 公式サイト:ランチパイ公式サイト
- 動画URL:YouTube CM動画(スキマランチ篇)
施策目的
「ランチパイ」の広告施策には、
「生活者への新しい食習慣の提案を含めた長期的なブランド価値の構築」という意図が見えます。
目的
- 「ランチパイ」の認知度向上
- 忙しい現代人に向けた「スキマランチ」という新しい選択肢の提案
- 商品特長である「本格感」と「手軽さ」のポジショニングを確立
WHO
今回の施策でのターゲットは誰か?
ターゲットの設定は広告施策の成功を左右する最重要ポイントです。
今回の「ランチパイ」は、働く世代≒忙しい現代人をメインターゲットとして設定しています。
この視点からターゲットとインサイトを整理します。
ターゲット
- 20代~40代の働く男女
- 特に「スキマ時間」を活用して食事を済ませる必要がある忙しい現代人
ターゲットが抱える課題・インサイト
- 課題
- ランチタイムに十分な時間を取れない
- 手軽さと満足感を両立する食事が不足している
- 食生活のバランスが崩れがちで、健康や食事への罪悪感を感じる
- インサイト(隠された本音)
- 「本当はきちんとした食事をしたいけど、時間がない」
- 「忙しい自分を肯定したいが、健康や満足感も犠牲にしたくない」
- 「スタイリッシュでスマートなライフスタイルを維持したい」
- 忙しい現代人の中でも、手軽さだけでなく、食べる喜びや満足感を得たい
What to Say
今回の施策で届けたいメッセージは何か?
商品そのものだけでなく、生活の中にどのように取り入れられるか、
「どのような価値を提供したいのか」を考えることが、顧客の心を動かすポイントです。
「ランチパイ」は「忙しい現代人」をターゲットにして「スキマ時間に満足感のある食事を手軽に楽しめる」という価値を提供することを目指しています。
メインメッセージ
「スキマ時間に満足感のある食事を手軽に楽しめる」
Reason to Believe
そのメッセージが信じられる根拠は?
本格的な味わいと軽食としての手軽さの両立していることで、「スキマ時間に満足感のある食事を手軽に楽しめる」いえる状態を担保しています。
- 多層パイ生地:バターの香りが豊かでサクサクした食感が魅力。
- 複数の味バリエーション:本格的な料理フィリング(ビーフカレー、キッシュなど)
- 手軽さ:片手で食べられる設計が、スキマ時間の食事需要にフィット。
想定される競合
ランチパイは「スキマ時間を活用して手軽に食事を摂る」というコンセプトを持つ商品で、
軽食市場や即食市場の中で競争を繰り広げることが想定されます。
競合を以下の3つのカテゴリーに分けて整理します。
1. 栄養補助食品・バータイプ
主な競合
- カロリーメイト(大塚製薬)
- SOYJOY(大塚製薬)
- Inバーシリーズ(森永製菓)
競合ポイント
- 共通点:手軽さや持ち運びやすさ。スキマ時間での軽食としての用途が一致。
- 差別点:ランチパイは「食事感」と「満足感」を重視しており、味覚や食べる楽しさで差別化。
2. コンビニやスーパーの惣菜系軽食
主な競合
- おにぎり・寿司シリーズ(各コンビニ)
- サンドイッチシリーズ(各コンビニ)
- ホットスナック(ファミリーマートのファミチキ、ローソンのからあげクンなど)
競合ポイント
- 共通点:片手で手軽に食べられる。食事シーンに直結する用途。
- 差別点:ランチパイは「新しい形状」と「オーブンで焼いたという本格感」で惣菜系軽食と一線を画す。「焼きパイ」という特性でパリッとした食感を提供。
3. 冷凍食品やスナック類
主な競合
- 冷凍パイ系商品(味の素の冷凍パイシリーズなど)
- 常温スナック菓子(ポテトチップス、ビスケット系など)
- インスタント食品(カップラーメン、カップスープなど)
競合ポイント
- 共通点:手軽に購入可能で、比較的低価格帯。
- 差別点:冷凍パイやカップラーメンと比べ、常温で保存できる手軽さがありながらも食事としての「満足度」をアピールできる。
食事としての本格感を出すことでで軽食カテゴリ内で差別化
- カロリーメイトは「軽く食べる」「効率的に栄養を摂る」ことに特化している一方、
ランチパイはバター香るサクサクのパイ生地と濃厚なフィリングで「食べる楽しさ」や「満足感」を提供している。 - ランチパイは「軽食」ながらも、食事を楽しみたいという欲求に応える選択肢になることで差別化を狙っている。
HOW to say/to deliver
メッセージはどのように表現し・届けているか?
商品の特長を伝えるだけでなく、 ターゲットが「この商品を使うことで自分にこんな価値がある」と認識してもらうこと必要です。 メッセージをそのまま伝える以上にお客様の記憶に残すための工夫を見ていきたいと思います。
広告内容
- 「スキマランチ」をキーメッセージとして、「食べ逃しに」「移動中に」「会議前に」と「軽食でもサクッと食べたいと思うシーンに「ランチパイ」」の構造でシーンをつないでいる。
- 新木優子さんを起用し、忙しい日常をおしゃれに楽しむ姿を描きながら、60年代風、モード風、オリエンタル風の3つのスタイルで多様なシーンを表現。
シーンをそのまま描く以上に印象に残すための工夫と考えられる。 - ビジュアルと映像を通じて、「忙しくてもおしゃれで充実したライフスタイル」を伝える。
各種施策
- SNSキャンペーン
- 交通広告(新橋)
- 店頭(「スキマランチ」も「新木優子さん」もつかっていないがもったいない)
学びポイント
マーケター視点での学び
「ランチパイ」の「スキマランチ」広告キャンペーンでは「新しいライフスタイルをとらえ」そこにマッチした「カテゴリ創造」を行っており、市場のとらえ方やカテゴリ創造の時に必要な視点で参考になることがあると感じます。
1. ライフスタイル変化への対応
- ターゲットの現実に即した提案
- 忙しい現代人に「スキマ時間を活用する」という提案は、
ターゲットの生活に深く根ざしたアプローチ。 - 従来の「時間をかけた食事」ではなく、スキマ時間を前向きに活用する提案は新しい価値観を提供している。
- 忙しい現代人に「スキマ時間を活用する」という提案は、
- 食事シーンの再定義
- 「食事はゆっくり取るべき」という固定観念にとらわれず、
短時間でも満足感が得られるという選択肢を明確に示している。
- 「食事はゆっくり取るべき」という固定観念にとらわれず、
2. カテゴリーデザインの重要性
- 新しい習慣を名前で定義する強さ
- 「スキマランチ」という言葉が商品とコンセプトを象徴し、顧客の記憶に残りやすい。
- 先行者利益の確立
- 「スキマランチ」という独自カテゴリーを提案し、軽食市場の中でブランドの差別化を強化。
クリエイティブ視点での学び
- ターゲット像を表現する新木優子さんの演技
- 忙しいながらも余裕を感じさせる表情や仕草は、
ターゲットの「理想の自分」を体現しています。 - 「食べ逃しに」「移動中に」「会議前に」といったシーンを海外旅行のワンシーンのように描くことで
- 忙しいながらも余裕を感じさせる表情や仕草は、
- 音楽とテンポの融合
- 軽快でおしゃれな音楽を採用し、ターゲットに「軽やかな日常」を想起させる工夫がされています。
まとめ
湖池屋「ランチパイ」の広告施策は、ターゲットである忙しい現代人の隠された本音に寄り添い、
「スキマ時間をおしゃれで満足感のあるものに変える」というライフスタイル提案に挑戦しています。
「新しいカテゴリ創造」「ターゲットのインサイトと商品特長を一貫して訴求する」点は参考になる方も多いかと思います。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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