今回紹介する事例
デザインは「デザイナーのもの」「特別なスキルがある人のもの」という時代は終わりを告げてると感じます。
「あらゆる人がデザインで輝ける社会をめざす(Empowering the World to Design」を掲げている」Canvaは現在世界190か国で1億以上のユーザーが利用するデザインサービスツールで、日本でも2017年の上陸以降、多くのユーザーが利用しています。 豊富なテンプレートに感覚的に使えるUIとまさに「あらゆる人がデザイン」を身近に感じることができるサービスで、私自身も広告代理店に勤務していた時代から利用を開始してその恩恵を受けております。
そのCanvaから24年11月18日にyoutube動画広告として「島の郵便屋さん」が公開されました。
過去にはビートたけしさんと劇団ひとりさんを起用した戦国時代をシーンにしたCMや、
少し危ない部下と上司の関係をシーンにしたCMなど印象的なCMを公開しています。
今回のCMはその時のコメディチックな内容と打って変わって、
とてもハートフルで心温まる内容になっています。
”年賀状を書いて届ける年末年始”のとある島に住む少女と町の郵便屋さんのやり取りをもとに、
今回のCMではどのような狙いをもってこのキャンペーンが展開されてきたのかを考察したいと思います。

キャンペーン概要
- 商品:デザインサービスツール Canva
- 開始期間:24年11月
- 施策名:年賀状も、Canva
- 公開媒体:Youtube
- 公式サイト:https://www.canva.com/
- 動画URL:島の郵便屋さん – Canva公式動画
施策目的
- 年賀状シーズンに合わせてCanva ユーザーを増やすこと
広告内容
- 動画広告「島の郵便屋さん」




舞台は小さなとある島。
郵便屋さん役の古舘寛治さんと島に住む小学生役の泉谷星奈さんとの掛け合いを中心に、
郵便屋さんが住民たちの思いを届ける心温まる物語を描き、感謝や愛情が手紙やメッセージによって伝わる瞬間を表現しています。
今年で最後の年賀状配達になることを告げるシーンからCanvaを利用するシーンが登場します。
各種施策
- Youtube動画広告(https://www.youtube.com/watch?v=msrdavnDAfo)
- 公式SNS(https://x.com/CanvaJapan/status/1858435228143919364)

同タイミングに同じ少女のアナザーストーリーとして、
両親に思いを伝えるためにCanvaを使う動画も公開されている。



WHO
今回の施策でのターゲットは誰か?
ターゲットの設定は広告施策の成功を左右する最重要ポイントです。
今回の施策でのターゲットは
「お正月に年賀状・メッセージカードを作る×少しこだわったデザインにしたい」
人をメインにしています。
最近では紙の年賀状だけでなく、
オリジナルのデザインをチャットやメールで送り人も増えているので、
「年末年始に誰かに感謝の気持ちを伝えたい人」をターゲットになっていると思います。
ターゲット
- デザイン初心者
- 特に年賀状やオリジナルデザインを通して感謝の気持ちを届けたいと考えている人
ターゲットが抱える課題・インサイト
- 課題
- 人と被らない、こだわったデザインでメッセージカードや年賀状を作りたいけど、デザインツールを使いこなすスキルがない。
- インサイト(隠された本音)
- 「特別な思いは、特別な形で届けたい」
- 「簡単に作りたい、けど自分らしさも入れたい」
What to Say
今回の施策で届けたいメッセージは何か?
What to sayとは「何を言うか」、広告においては「何を印象として残したいか」を指します。
主には商品の特徴や企画で伝えたいことがここに設定されます。
今回のCanvaの広告施策「島の郵便屋さん 年賀状作りもCanva」においては・・・・
「誰でも 素敵なデザインが作れること」
「年賀状作りもCanva」
年末のタイミングに合わせて、Canvaが”手軽に””誰でも”素敵なデザインを作成できることをメインメッセージにおいている。
今まで年賀状作りは専門のソフトを使っていた人や既製品の年賀状を使っていた人に対して、
Canvaへの乗り換えを促していることがうかがえます。
Reason to Believe
そのメッセージが信じられる根拠は?
RTBとはReason to Believeの略称です。 日本語に訳すと「信じられる理由」となり、 商品や広告施策においての「What to sayとは「何を言うか」」の根拠になる部分を指します。 さらにシンプルに考えると「What to sayとは「何を言うか」」の「何故ならば」に当たる部分になります。 このRTBがしっかりある商品・広告はより”納得感”を醸成するために非常に重要なポイントです。 広告施策においてすべてを伝えることは難しいですが、今は検索の時代です。 検索され調べられた時にRTBがしっかりある商品・サービスが選ばれる 今回「年賀状ならCanva」というメッセージに対して、信じられる理由は下記になります。
1・簡単に良い年賀状のデザインが作れること
そもそもになりますが、アドビのような専門ツールと比較してできることは限られますが、
デザインツールとしての使いやすさは抜群のCanva。
普段デザインの仕事をしていない・かかわらないような人でも簡単にオリジナルデザインを作ることができます。
加えて、Canvaの特徴の一つでもある「良質なテンプレート」を使えば、
さらに簡単に年賀状のデザインも作ることが可能になります。

2・年賀状印刷サービスもついていること
作ったデザインを印刷するのはなかなか大変な作業になります。
そのようなユーザー心理を理解してか、
Canvaでは印刷代行のサービスもありました。
面倒な印刷もCanvaで簡単にできることが可能です。

想定される競合
主な競合は下記の3つが想定されます。
1. オンラインデザインツール
競合例:
- Adobe Express
- GIMP
- Crello(現VistaCreate)
特徴:
- Canvaと同様、テンプレートを活用したデザインが可能。
- 年賀状に限らず、幅広い用途に対応。
- 競合ポイント:
- 使いやすさ(UI/UX)
- 無料プランでの機能の充実度
- テンプレートや素材の数と品質
2. 年賀状印刷・作成サービス
競合例:
- 郵便局の年賀状作成サービス(はがきデザインキットなど)
- 富士フイルム(フジカラー年賀状)
- カメラのキタムラ
特徴:
- 印刷から配送まで一括で対応。
- 郵便局との連携や特別なキャンペーンを実施することが多い。
競合ポイント:
- Canvaは「デジタルのみ」での利用も可能であるため、
物理的な印刷サービスを付加するかどうかが競合ポイントになる。
3. SNSプラットフォームやアプリ型デザインツール
競合例:
- LINEスタンプ作成機能、スマホアプリの「年賀状作成アプリ」
特徴:
- 年賀状をデジタルで作成し、LINEやSNSを通じて簡単に送れる機能を持つ。
- スマホに特化した操作性。
競合ポイント:
- Canvaもスマホアプリを提供しているため、
直感的な操作性やテンプレートの親和性が比較される。 - デザインの幅広さ、PC画面も合わせたデザイン作成時の簡便性
HOW to say/to deliver
メッセージはどのように表現し・届けているか?
「信じられないほど、素晴らしく」
How to sayとは「どうやって伝える・表現するか」、How to deliveryとは「どのように届けるか」を指します。 主に広告施策における考え方になります。 具体的にはデザインや印象に残るコピーライティングなどは「How to say」、 渋谷駅の駅のホームに広告を出す、イベントをやってそこに来た人に情報を届けるのは「How to delivery」になります。 what to sayで定義した内容を、そのまま伝えても印象・記憶に残りませんが、 ここのHow to sayとHow to deliveryで工夫をすることで、 世の中に大量にあふれる情報の中で、企業が届けたいwhat to sayを印象に残しやすく、 記憶に残りやすくすることが可能です。
今回「年賀状ならCanva」というメッセージを下記のような形で表現しています。
1・小さな子供”でも”、「信じられないほど」簡単に心に残るデザインを作れる
今回の広告の主人公は島に住む小学生の少女です。 まだ小学校低学年くらいですが、 島の郵便屋さん(そして動画を視聴した私たち)の心を動かすような温かみのあるデザインを動画上で作成しています。 このシーンを見せることで、 「デザインに縁遠い人(少女)でも簡単に”信じられないほど、素晴らしい”心に残るデザインを作れる」 Canvaの特徴を視聴者に印象付けることができています。

とても細かい表現箇所ですが、個人的に注目したポイントは下記です。
今回の動画では、ミカンの皮もばらばらになってしまうような剥き方しかできず、複雑なデザインツールを使いこなすことが難しいと想定される少女を登場させています。
その少女でも素敵な、心に響くデザインを簡単に作れることを表現しています。

2・心温まるストーリーで印象に残す
ただ、少女が素敵なデザインを作るシーンを見せても印象に残らなかった可能性があります。 そこで、今回の動画では「少女と島の郵便屋さん」の間にある心温まるストーリーを軸に進んでいきます。 2分近い動画で完全にWEB動画に振り切った内容にすることで、 結果的にはスキップされやすい広告をスキップされない、最後まで見てしまうような内容にすることで、印象に残すことに成功していると思います。

3・毎回共通のメッセージを活用している
Canvaは過去にも動画広告を展開しています。 動画で表現するシーンや訴求する「what to Say」は違うのですが、 一つだけ共通していることがあります。 それは動画の最後で流れるメッセージ 「信じられないほど、素晴らしく」 です。

実はこのメッセージブランドのタグラインになっていて、 他の広告含めてあらゆる場所で展開されています。
毎回のキャンペーンで「信じられないほど、〇〇」という共通フレームとセットにしながら展開しており、 長期的なブランドマネジメントとして「信じられないほど、素晴らしい」デザインが作れるサービス・ブランドであることを獲得しようとしていることがうかがえます。
- 島の郵便屋さん篇


what to say :Canvaなら、誰でも簡単に素敵な賀状が作れる
How to say:小学生低学年”でも”、心を動かす年賀状が作れる
- 「信じられないほど、素晴らしく。」和平成立篇


「信じられないほど、素晴らしく。」和平成立篇 30秒【Canva 公式(キャンバ)】
what to say :Canvaなら、誰でも素晴らしいSNS投稿が簡単に作れる。
How to say:デザイン経験ゼロの戦国武将”でも”、簡単に作れる
- 今年の目標篇


what to say :Canvaなら、素敵なプレゼン資料を作ることができる。
How to say:とっても緊張する、重苦しい雰囲気のプレゼンでも盛り上がるような資料が作れる
- 検索結果でも

学びポイント
今回の「Canva 「島の郵便屋さん 年賀状づくりもCanva」」 から学べるポイントは下記の3点です。
1・who、What、RTB、How の土台設計の重要性
長尺の動画広告にあるにもかかわらず、伝えたいことが明確な広告になっています。 それは「who、What to Say、RTB、How to Say」すべてがしっかりと連携されているように設計されているからだと思います。 広告表現の面白さに入る前に、土台の設計をしっかりと作る重要性を改めて感じました。
2・クリエイティブでジャンプする重要性
1の内容と矛盾するかもしれませんが、「動画」としての面白さがあるからこそ、 印象にのこる広告施策になっています。 情報にあふれる今の時代で、「感情に訴えるストーリーテリング」をうまく活用することで印象に残すことができると改めて気づかされました。 「どうやったら人が持つ感情」に訴えることができるのか?はマーケティングに携わる人すべてが意識してもよい内容だと思います。
3・長期的なブランドマネジメントを意識した取り組み(変えない勇気)
毎回面白く、違った色の動画広告を展開していますが、
「信じられないほど、素晴らしく」という共通メッセージを残すことはぶれずに行っているCanva。
ブランドは「継続・一貫性」でできるものと多くの先人たちが言っていますが、
今回のCanva の広告施策からもその重要性を再確認することができました。
マーケティングの仕事をしていると、
すぐに結果が出ないといろいろと変更したくなることもありますが、
ぐっと我慢して一貫してやり続ける勇気も必要だと感じます。
まとめ
Canvaの動画広告施策は、毎回印象に残るだけでなく、
長期的に残していきたい「ブランド資産」をしっかりと考えて取り組んでいると改めて感じました。
これはCanvaに限らず、成長している企業もできている共通のポイントだと思います。
(ウーバーイーツの「ウーバーイーツでいいんじゃない」、タイミーの「スキマ」、チョコザップの「コンビニジム」など)
今回の記事同様に、
このサイトでは引き続き各社の取り組みを
Who
What(to Say)
RTB
How(to Say/to Delivery))
で整理して紹介していきます。
皆様と一緒にマーケティングの知見を深め、日本を元気にできたら幸いです!
参考リンク・書籍など
リンク
- Canva公式サイト
https://www.canva.com/
書籍
- ブランディングの科学
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